福島市を観光目的で訪ねる人はそう多くないかもしれない。東北地方の県庁所在地は夏のお祭りで有名なところが多いが、福島の「わらじ祭り」は知らない人も多かろう。メジャーなのは競馬場だろうか。

　しかし、あにはからん、この地味な福島市になんともすばらしい旅籠が存在していた。それがこの竹屋旅館だ。

　竹屋旅館は、座敷蔵を客室とした旅館。座敷蔵とは、文字通り蔵作りの建物を座敷として利用しているものだ。外観はすっかり蔵なので、まさに「シック」な雰囲気である。

　入ってみると、廊下との間に重々しい蔵の扉が開いているので、誰が見ても蔵の中だとわかる。広間は蔵の中とは思えないつくり。広々としていて割と明るく圧迫感もない。

　この変わった建物は、やはりお大尽の遊びと関係があった。明治期、ここ福島盆地の北側に位置する川俣町などを中心に絹織物製品の特産地として栄えた歴史がある。そのときの座敷遊びのために、こんな凝った建物が作られたのだそうだ。登録文化財に指定されている建物であり、宿泊しなくても蔵座敷は見学ができる。

　一部客室は蔵の先に増築したようなところもあるが、そちらも落ち着いた庭に面し、室内の造作も古いまま。こぎれいにしてあり、宿泊の上で不満はない。

　ここは風呂も２４時間入れる。美しいステンドグラスのある、風情満点の風呂である。