「松阪」といえばやはり「牛」と言う人は多かろうが、牛よりも昔から全国区で有名になっていた松阪商人、伊勢商人、三井高利に本居宣長と胃袋を満足させるだけではもったいないネタがいっぱいである。

　伊勢参りの参宮街道沿い、最後の一泊の地となることが多かったらしいこの町は、古くから人の往来も多く栄えた。

　この町で創業して二百年になるという鯛屋旅館は「日野町」というところにあるが、この町名も蒲生氏郷が近江日野から商人を招き入れて作った町ということでついた名だそうだ。

　目の前を通る参宮街道沿いの建物は、道路に対して幾分斜めになるように建てられているが、これも氏郷の城下町作りの時に武士が隠れる場所が出来るようにと、あえて建物の出入りが多くなるように作られたものだそうである。

　現在鯛屋旅館の目の前の道はすっかり改修されてきれいになっているが、それでも確かにこの旅館も道路に平行には建っていない。間違いなく歴史そのものをそこに見ることが出来る宿である。

　道路整備の際にセットバックしているが、表は昔のまま残したというから、「歴史と伝統」を大切にしていこうという意気込みも伝わろうと云うものだ。館内、室内はきれいで、だれでも安心して宿泊できる宿だといえる。