江戸時代東海道でも大きな宿場としてにぎわった小田原。５００年あまりに渡ってにぎわってきた町の「活力」の地力はこういうところに出るとでもいうのか、そこここに営業を続けている様々な業種の老舗がある。

　宿屋でその老舗の筆頭がこの古清水旅館。弥次喜多の話にも「きょうは小清水に泊まるつもりだ」との台詞で登場する。「大清水」が本陣、「小清水」が脇本陣で、弥次喜多の泊まるような宿ではなかったろう。両者は途中合併し現在の「合同本陣　古清水」となったそうだ。

　そのまま残っていればさぞやと思うが、小田原も空襲で焼けた。昭和２０年８月１５日未明。伝統の宿は「最後の空襲」によって灰となった。従って現在の古清水の建物には昔の面影はない。往時を偲ぶ漆器類などを所蔵しているそうだが、普段は表に出していない。一部常時展示されている資料などで昔を思うほか無い。

　宿としての対応は、さすが昔から大動脈の大きな宿場で本陣を勤めただけあるというべきか。別に気取ったところがあるわけではないが、やはり「品」がよい。定宿にしている人も多かろう。小田原には歴史散歩を楽しめるスポットがいくつもあるが、そういう散策を楽しむなら宿はここだ。