茨城県真壁町は中世からの歴史を誇る町だ。近世になると木綿の取引などで栄え、江戸期には近江から、関東で最も早く日野商人が入って醸造業などに携わったという。

　江戸３００年の間ににぎわった町にはやはりそれなりの遺産が存在する。この真壁の町はそれが特に顕著で、町中を歩けば至る所登録文化財の建物だらけだ。建築時期は主に江戸末期から昭和初期であるが、それで町並みの統一感を失わないと言うことは、戦前まではほぼ江戸の生活と地続きであったということだろう。戦後日本は、それまでの数百年の営みをまさに「激変」させたといえる。

　伊勢屋旅館もやはり登録文化財になっているが、表の構えはさすが。ここは真壁でもっとも有名な「勢州楼」という料亭だったそうなのだが、現在でも歴史に十分見合う重厚な母屋を残している。

　旅館としては「登録文化財の宿」というような気負いは無い。奥から小さなこどもの声が聞こえてきたりする。客室も改装されており、中から見る限りはごく普通の旅館である。

　素泊まりも可能だが、夜に食事をするようなところは多くなさそうなので、基本的には宿に頼んだ方が無難かもしれない。古い町並みの旧市街地にはコンビニがない。バイパスまで出る必要がある。お酒は、宿から歩いて５分ほどの「ますだ酒店」で、地元の村井醸造のお酒が買える。